一般社団法人大阪代協

理事会その他の活動報告

カスタマーハラスメント対策セミナー開催

2023.07.27

 日本代協阪神ブロック協議会は、7月13日(木)15時30分から、井上久社会保険労務士・行政書士事務所の井上久氏を講師に招き、「クレーマー・ヘビークレーマー対応 大手損害保険会社苦情受付係3,144件の証言」をテーマに、Zoomウエビナーおよび大阪代協会議室でのリアル聴講によりセミナーを実施しました。併せて171名が真剣に耳を傾けました。

大阪代協・新谷会長

 開催に先立ち大阪代協の新谷香代子会長が挨拶に立ち、「本日は社会問題となっているカスタマーハラスメント(カスハラ)をテーマにセミナーを開催することにしました。私たち保険代理店は、お客様の事故の相手や店頭に来られる方をあらかじめ人選することが難しい仕事です。もしその相手がクレーマーであったとき、いかに社員を守るのか、そして社員が働きやすい環境にするにはどのようにすればよいのかを勉強したいと思います」と述べました。

 セミナー講師である井上氏は、損保ジャパンの「本社お客さま相談室」において4年間で3,144件の相談を受電し、その間に苦情とクレーマー事案等の対応を行いました。同氏は、「苦情とクレーマーを混同しがちだが、苦情は保険会社側の①説明不足 ②連絡不十分 ③態度・対応といったものがその発生の主な原因で純粋なお客様の表明であり、組織としてこれを記録・共有してPDCAにつなげる必要がある」と述べる一方、「クレーマーは不当要求などを目的としてルール違反の攻撃を仕掛けてくる輩であり、組織としての対応およびこれを記録・共有してその対応ノウハウを培う必要がある」とその違いを説明しました。そして、クレーマーへの対応を誤ると、従業員は業務パフォーマンスが低下し、健康不良、現場への恐怖といった影響を受ける上、企業もその対応による時間の浪費や業務上の支障、金銭的損失、ブランドイメージの低下等といったダメージを被ると指摘しました。

講師の井上久社労士

 苦情を受電したときの対応法は、10分間ほど話をじっと聞き、落ち着いたところで「こういうことですか?」と事実確認をし、「そうです」という答えを得たら、こちらの説明に入ることを心がけて電話対応していたと話しました。その上でとくに心がけていたことは『絶対に逃げない』『できない約束はしない』『当たり前のことを正々堂々と説明する』ことだったといいます。

 かかってくる電話の中の10件に1件はクレーマー、100件に1件は過激なヘビークレーマーが存在するといい、悪質クレーマーを見抜く7つ(①悪評をばらまくと脅す ②公的機関や監督官庁に訴えると脅す ③結論を急がせる ④暗に金品や特別待遇を要求する ⑤他社の対応を持ち出す ⑥こちらを懐柔しようとする ⑦社会通念から逸脱した謝罪を求める)のポイントを挙げ、1つ該当すれば〝クレーマー〟、2つ以上該当すれば〝ヘビークレーマー〟として、組織として判断することが重要であると述べました。こうしたクレーマーは、「なんや、その目つきは」「なんや、その態度は」等といった『因縁』をつけ、無理矢理に「すみません」という言葉を引き出し、債務の履行を執拗に迫るのが常套手段となっていると指摘。こうした因縁に対して「まともな理由が通る人物ではないので、解決しようとせず、物分かれ大歓迎、長期戦になるならなればよい」という心構えで組織のトップから最前線の社員全員が同じ視点で臨むことが大切であると強調しました。クレーマー、モンスタークレーマーは絶えず相手の弱点、スキを狙っているので、その手に乗らないこと。そして、具体的な対応として、①(とくに上司は)絶対に逃げない ②勇気をもってNO(いやです)という言葉を発するとともに、その後に警察が動きやすくなるように録音や録画などの証拠を残すこと、不退去罪(刑法130条)や脅迫罪(同222条)、強要罪(同223条)、威力業務妨害罪(同233条)、恐喝罪(同249条)の法律知識を備えておくことが望まれると話しました。

 また、同氏は数多くの相談対応等から学んだクレーマー対策(キラー・フレーズ)を披露。クレーマーからの「ばかやろう」「このやろう」といった罵声に対してその都度、「穏やかにお話しいただけませんか」と繰り返し(4回程度)お願いし、罵声がピークに達したときを見計らってひと言「怖いです」「このままでは、おかしくなりそうです」と訴えると、クレーマーは「そんなつもりで言ったんじゃない・・」と退散し二度と攻めてくることはないという秘策を紹介しました。同氏は、その理由を「クレーマーは『怖い』といった相手がそのまま医者に行き、心神喪失の診断書を取って警察に届ければ『脅迫罪』が成立する可能性があることを知っている。これはクレーマーがプロであればあるほど効果が発揮される」と説明しました。

 そして事前対策として、①最寄りの警察署への挨拶や警察署が実施している「不当要求防止責任者」の専任と講習の受講 ②警察官立ち寄り所等の「魔よけのポスター」の掲示 ③防犯ビデオの設置、録音装置の準備をしておくこと、さらに④社員のメンタルを守るための相談窓口・通報窓口を設置してすぐに情報をキャッチできる体制を整えておくことを推奨しました。

 最後に、新谷会長が「本日は先生の実体験に基づいたお話であり、とりわけベテランの代理店にとっては経験したことがある内容も多かったと思います。カスハラは、経験値の豊かな代理店は相応の対応ができますが、若い世代の従業員にとってはまだまだハードルが高い問題です。そういった意味で本日のお話は勉強になったと思います。また、ベテラン代理店も本日の話を念頭に置き、彼らを守り、育てていっていただきたい」と締めくくりました。

(記事:新日本保険新聞社)

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