一般社団法人大阪代協

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2022年度 代理店賠責Webセミナーを開催しました

2022.08.26

2022年度代理店賠責セミナーアンケート集約結果
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 大阪代協主催の代理店賠責Webセミナーが、8月25日(木)午後3時から、開催されました。
講師は、日本代協新プラン委託講師の杉山幹久氏です。

 開催にあたり、新谷香代子会長が挨拶に登場し「我々の業界では保険金をお支払いしてお役に立つ一方で、トラブルも数多く発生しています。そんぽADRセンターには年間3万件ほどの苦情、相談が寄せられています。代理店賠責の引受会社であるチャブ損害保険には年間1千件ほどの相談があり、150件ほどの書面による事故報告があるそうです。さらに、最近気になるのは賠償請求額、訴訟額の高額化です。代理店、保険会社に対して1億円を超えるような訴訟が発生したり、保険会社が代理店に数千万円の求償を行った、など耳を疑うような話も聞こえてきます。本日参加の保険会社の社員の皆様には、保険会社、代理店のお互いのためにも代理店賠責に加入いただくよう代理店にお勧めください。代協に未加入の代理店様も同様です。これを機会に是非ご検討下さい」と、代理店賠償責任保険への加入を呼びかけました。

セミナーでは、冒頭、杉山氏が勤めていたチャブ損害保険の担当部署において、全国の代理店から1日に3~5件、年間では1000件前後、自らの保険募集行為に関する相談を受けていますと話し、いかに日常的にトラブルが発生しているかを強調しました。 

講師 杉山 幹久氏

セミナーの前半は、損保代理店に求められるコンプライアンスについて、現在に至る変遷と具体的な事例を交えながら説明が行われました。お客様とのトラブルを防ぐためには、単にルールを守るだけではなく、なぜそのルールが存在するのか本質が重要だと強調しました。関東財務局による代理店ヒアリング時のコメントを引用し「ルールの本質をしっかり理解していないと、環境変化に十分対応、改善ができない」という見解を示しました。

次に、保険募集時の3つの基本ルールついてポイントが示されました

意向把握義務

従来の意向確認に加え、募集プロセスにおいて、顧客ニーズに合致した保険商品を適切に選択・購入できるようにするための対応が求められる。

情報提供義務

原則として「契約概要」「注意喚起情報」を記載した書面(例:重要事項等説明書)等を用いるなどの一律・画一な手法で行われるべき。特に重要事項説明書を常備・携行しこれを提示しながらお客様に説明することの重要性を強調。とくに「つい・うっかり・うろおぼえ」は虚偽説明につながるとし、これによって代理店が敗訴した裁判事例を紹介し注意を促した。

体制整備義務

ある全国規模の代理店が実践している「3プラス1運動」を紹介。1人のお客様に1回2時間の説明を3回行ってから契約へと導き、さらにその後にお客様に届いた保険証券を持って来店していただき、そこでお客様の意向と契約内容が合致しているかをもう一度説明するといった、予習・復習的に意向把握する取り組みが求められる。

続いて、代理店の保険募集に関する法律上の責任について説明がありました

代理店賠責の対象となるのは、民法と保険業法

代理店賠責は、保険募集人が保険募集業務に関わる行為に起因して、お客様や第三者に損害を与えてしまったことで、賠償を求められた場合に負担する、法律上の賠償責任に対して保険金を支払う保険です。
この根拠となる法律は、民法第1条の「信義誠実の原則」と保険業法第300条です。
実際の保険金支払い事案ついて、これらの割合は、民法の信義則違反が約10%、保険業法違反が約90%です。

特に多いのが、保険業法第300条第1項「虚偽の説明」です。
悪意を持ってお客様をだます人は、まずいないと思われますが、「つい・うっかり・うろおぼえ」で誤った説明をしてしまうことは誰にでもあり得ることです。この「つい・うっかり・うろおぼえ」による誤った説明も「虚偽の説明」となり、保険業法違反にになります。この点は十分注意が必要です。

重要な保険業法第283条

代理店賠責を考える上で、特に重要なのは、保険業法283条(所属保険会社等及び保険募集再委託者の賠償責任)です。
第1項では、保険募集人が保険契約者に与えた損害は、所属の保険会社が負うことを明記しています。即ち第一義的にお客様の損害は保険会社に賠償義務が生じることになります。

第2項では、上記の保険会社の責任についての免責要件が記載されています。当初は、免責に該当する事案はまず無いだろう、と思われていました。しかし、最近になって保険会社は、業務連絡会の開催やマニュアルの提供、メールやレターの配信を理由に免責を主張するケースが多くなっているそうです。免責が認められると、責任は全て代理店が負うことになります。

第4項では、第1項で保険会社が負担した損害について、代理店に対する求償が可能であると記載されています。いわゆる「求償権」の根拠となります。保険業法改正が検討される中で、この求償権の義務化が大きく取り上げられたことが説明され、最終的に義務化には至らなかったものの、業法改正以降、求償権を行使する事案は確実に増えたことが報告されました。

具体的なトラブル事例紹介

(全てが保険事故になったケースとは限りません)

①自動車保険:車両無過失特約と車両新価特約
⇒免責事案の説明不足

②火災保険:保険料値上時に補償削減
⇒地震を削除して提案後地震が発生。意向確認不足

③自動車保険:事故時の保険料シミュレーション誤り
⇒損害額の確認不足

④貨物保険:合併の前後で補償範囲が変更されていた
⇒合併後の補償確認不足

⑤傷害保険:通院補償限度日数の変更説明不足(90日が30日に)
⇒改定確認不足・説明不足

⑥傷害保険:みなし入院規定(ギプス認定)変更
⇒確認・説明不足

⑦火災保険:新価特約付帯契約の保険金額不足
⇒保険金額の確認・提案不足

⑧自動車保険:年齢条件変更時の限定特約変更漏れ
⇒適切な見直し・確認不足

⑨自動車保険:オールインワンに構内専用車両付保漏れ
⇒事務処理時の確認ミス。高額訴訟に発展。

⑩自動車保険:ファミバイ特約(一家に一特約)付契約の解約
⇒事務処理時の確認ミス

⑪自動車保険:車両入替時の新価特約付帯漏れ
⇒特約付帯可能期間は保険会社によって異なる

⑫自動車保険:法人成りした契約の年齢条件不適合
⇒個人から法人に契約変更時の確認不足

⑬自動車保険:他社切り替え時の特約漏れ
⇒ロードサービスを含めて同じ契約内容は不可能。説明不足。

⑭火災保険:風・雹・雪災のフランチャイズ方式
⇒説明不足、提案不足

⑮新種保険:特定感染者事業者費用特約の待期期間
⇒説明不足

⑯新種保険:管理下財物担保特約の免責業者
⇒受託物補償の提案不足

⑰生命保険:乗換時の不成立。前契約は解約済み。
⇒成立後前契約を解約すべき。訴訟事案。

⑱生命保険:離婚直前の解約手続き
⇒契約者本人以外の解約を認めた代理店を訴訟

そして、杉山氏は、「言った、言わない(重説手交前提)」「口座振替不能」「事故受け付け時に無責のものを有責であると回答した場合」によるトラブルは法律上の賠償責任を問われることは比較的少ないと述べる一方、「オールリスク」「(他社からの切替時)すべて同じかそれ以上」という言葉は何かあったときにトラブルにつながりやすく避けた方がいいとアドバイスしました。

閉講挨拶

最後に、組織委員会の守屋仁志委員長が「私たち代理店は日々努力を積み重ねて経営の品質を向上させています。しかし、「つい・うっかり・うろおぼえ」で責任が問われることが絶対ないとは言い切れません。代理店賠償責任保険へ加入は、我々にとって、保険会社やお客様へのマナーであると考えています。未加入の代理店は早急な加入が求められます。保険会社の皆様にとりまして、もし信頼する担当代理店が賠償問題に巻き込まれたらいかがでしょうか。ぜひともお勧めください」と挨拶し、閉会となりました。

(記事:新日本保険新聞社)

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