一般社団法人大阪代協

南支部の活動報告

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11月支部会≪南海トラフに備える。実践的BCPとは≫

2025.12.11

令和7年11月26日(水)15:30より第5回支部会を、東京海上日動火災保険 藤井寺支社3階会議室にて17名参加で開催いたしました。

今日も熱い!西村支部長

冒頭、『大阪代協とは』のスライドで代協の意義を確認し、その後西村支部長より挨拶があり、「本日のテーマである南海トラフ地震とBCPは、私たちにとって非常に重要な課題です。今日の学びを明日からの行動につなげていきましょう」と述べました。

続いて、会場をお借りした東京海上日動 藤井寺支社の秋田潤志氏から一言いただきました。秋田氏は、第三者評価制度の導入や自己点検の提出方法の見直しなど、代理店を取り巻くガバナンス強化の流れに触れつつ、「こうした環境変化の中で、私たちも皆さんのお役に立てる環境づくりやサポート、情報発信にしっかり取り組んでいきます」と述べました。

【勉強会の部】

今回の勉強会のテーマは、8月改訂の「南海トラフ地震臨時情報ガイドライン~BCPとの関連を解説~」。担当は新田剛志副支部長と、とがのき秀之会員です。新田副支部長は各地で防災セミナーの講師を務めるなど、防災知識に精通しています。
勉強会冒頭、新田副支部長から「今回は直近で堺北区の事業所団体向けに行った防災セミナーをベースに、勉強会向けに再構成した講義になります。そして今日のゴールは“南海トラフ地震臨時情報を自分事として理解し、防災・BCPの本質に気づくことです」と説明がありました。

今回の担当 新田剛志副支部長(左)、とがのき秀之会員(右)

“昨年の8月8日、何をしていましたか?”

本日の資料 南海トラフ地震臨時情報ガイドライン(PDF版)
内閣府情報サイト(HPリンク)

まず、参加者にスマートフォンの写真フォルダやLINE履歴を見返してもらい、「2024年8月8日の楽しい出来事を思い出す」ワークが行われました。
数名からもエピソードが共有され、会場は和やかなムードに。
その上で新田副支部長は、実はこの“8月8日こそ、初めて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された日”であったと解説。当時、大阪の多くの地域は震度1以下で揺れも感じませんでしたが、それでもドラッグストアでは水が棚から消えるなど社会には確かな影響が出ていたことが紹介されました。

もしあの日、地震が“発生”していたら、守りたかった日常はどうなっていたか
参加者に問いかける形で、防災の大切さを共有しました。

■“南海トラフ地震臨時情報を学ぶ

「臨時情報」ってなに?

「臨時情報とは、南海トラフ沿いで異常が観測され、通常より“相対的に”地震発生の可能性が高まっている状態を知らせるもの」という基礎解説がありました。初発表時、意味が分からないままイベント中止や鉄道運休など混乱が生じたため、2025年改訂では“日常生活は続けながら、ギアを一段上げて備える”ことが明記された点が大きな変更ポイントとのことです。

ガイドラインに見る“何をすべきか”と、南海トラフ地震の現実

続いて南海トラフ地震臨時情報ガイドラインの具体的な内容に触れました。
このガイドラインは約190ページに及ぶ資料ですが、その中でも特に重要なのが155~156ページに示されたチェックリスト(抜粋ページはこちら)です。
事業者向け・住民向け・行政向けの3区分から成り、私たちは“事業者であり住民でもある”立場として、この2ページに沿って備えることが求められています。以下抜粋です。
■発電機や設備を動かすための燃料の確認
■地域のハザードマップの確認
■耐震性の低い建物に近づかないよう従業員へ周知
■出入口に避難の妨げになる物を置かない
 ・・・等々。
どれも難しい専門対策ではなく、基本的で実行しやすい備えが中心です。
ただし事業者にとっては、
≪利用者や地域の安全を確保しつつ、社会経済活動をどのように継続するか。≫
この“バランス”をあらかじめ決めておくことが肝心であり、まさにBCP(事業継続計画)そのもの
だと強調されました。

発生確率「0.4%」と「7%」が意味するもの

続いて、新田副支部長は最新の「南海トラフ地震発生確率」について触れました。
今年の当初は「40年以内に80%」だったものが、9月の見直しで
「30年以内に60〜90%」
という表現に改められました。ガイドラインでは、臨時情報が発表された際の“地震発生の可能性”を次のように示しています。
巨大地震注意(昨年8/8のケース)
 → 1週間で0.4%
巨大地震警戒(M8以上)
 →1週間で7%


一見小さく見える数字ですが、新田副支部はこれを自動車運転のリスクに例えます。
■ドライバーが1年間に人身事故を起こす確率:0.4%
 これを【1週間で0.4%】と比較すると、

 地震発生の確率の方が「52倍高い」
■7%の場合は、

 人身事故より910倍高いリスク状態

「人身事故より910倍危険と言われて、備えない理由はあるでしょうか?」
という問いかけに、参加者も思わず背筋を伸ばしていました。

臨時情報の流れと、発表後に起きる“現実”

臨時情報は、異常現象の観測 → 「調査中」公表 → 有識者検討 → 「巨大地震注意/警戒」発表
という流れで公表
されます。

発表後の影響についても実例を挙げながら説明が続きました。
■重要サプライヤーの生産停止
■買い占めによる原材料不足
■サプライチェーンの寸断
■自社キーパーソンが実家の避難対応で1週間不在
■消費マインド低下、受注の急減 
 ・・・等が予想され、事業継続に与えるインパクトの大きさが示されました。

新田副支部は、臨時情報には「警報解除」という概念がなく、何も起きなければ“呼びかけ終了”になるだけという点を解説しました。「何度も発表されれば「狼少年のように感じる」かもしれないが、それを空振りと思わず、“素振りとして捉えること”が防災の基本姿勢。これがガイドラインにも明記されている重要な考え方だ」と述べました。

災害関連死について考える

災害関連死の深刻さ

続いて“災害関連死”の深刻さについて説明がありました。東日本大震災では津波などの直接死だけでなく、避難生活中の健康悪化による災害関連死が3805人にのぼり、熊本地震でも犠牲者の約8割が災害関連死でした。能登半島地震でも64%が災害関連死とされており、過去の大規模災害では一貫して避難後の生活環境が重大な影響を及ぼしている現状が紹介されました。

災害関連死の主な原因として、肺炎、脳梗塞・心筋梗塞、急性疾患、メンタル面による自死などが挙げられ、特に口腔ケア不足や水分摂取の不足、トイレ問題などが健康被害を拡大させる点が強調されました。

避難所がアップグレードされていない現状

続いて、日本の避難所環境の問題に話題が移りました。新田副支部長は、過去95年前の北但馬地震の避難所写真と、最近の能登半島地震の避難所写真が“モノクロ化すると見分けがつかないほど同じ”であることを紹介し、日本の避難所が長年改善されずにいる現状をクイズ形式で説明されました。

答えはA→B→Cの順。確かに見分けがつきません。

プライバシー確保が難しい生活空間、水分を控えてしまうトイレ問題、衛生環境の悪化による感染症リスクなど、避難所の課題が災害関連死につながることを改めて指摘。肺炎予防のための口腔ケア、トイレ環境の改善、水分摂取の確保など、個人レベルでできる対策にも触れられました。

災害関連死とBCP ~会社、従業員を守るために企業が出来ること

災害関連死の課題を踏まえ、企業がどのように備えるべきかという“BCPの実践”に話が展開しました。
企業として取り組むべき“今すぐできるBCP”として、以下のポイントが紹介されました。

■家具転倒防止など、従業員の身を守るための基本対策
感震ブレーカーの活用(大阪代協も推奨)による電気火災の防止
■復旧フローを共有し可視化する「ファーストミッションボックス」
■液状化対策としての復旧用機材の準備
■生命保険の特別貸付(災害時の金利ゼロ)の事前把握
■家財地震保険を活用したキャッシュフロー確保の考え方
■従業員の離職を防ぐための災害用トイレの配布や家庭の備え支援
 ・・・等々。

これらは“従業員を守ることが企業を守ることにつながる”という視点から紹介され、BCPは単なる書面づくりではなく、実生活と健康を支える取り組みであることが強調されました。「災害は必ず起きる。明日ではなく今日から行動を」とのメッセージで締めくくられ、質疑応答へと移りました。

質疑応答(一問一答)

Q:新田副支部長のセミナーでは、自社のBCP策定支援もしてもらえますか?
A:可能です。既存BCPの整理や取引先との連携強化まで含めてサポートしています。介護事業所など義務化されている業種は特に改善しやすいとのこと。
Q:地震への意識が低く、対策が続かない。どうすればよい?
A:怖いだけでは人は動けない。楽しみながら取り組む工夫(イベント化・スポーツ化)、また「できることを小さく始める」ことが重要。米や水を1つ多く買う、鍋の季節ならカセットボンベを数本多めに買う、乾物を少し多めに備蓄するなど、今日からできる行動がポイント。
Q:感震ブレーカーとは?
A:地震の揺れで自動的にブレーカーを落とし、通電再開時の火災(通電火災)を防ぐ装置。東日本大震災での火災の多くが電気火災であり、非常に有効な対策。
Q:BCPセミナーは一般向けや学校向けにもできる?
A:可能。中学生・小学生向けの防災教育も対応しており、CSR委員を通しての講演依頼も受け付けています。    ・・・など、日常と密接なテーマに多くの質問が活発に飛び交いました。

まとめ

南海トラフ地震や上町断層帯直下型地震の脅威、そして“災害関連死”の大きさは、私たちが直視すべき現実です。しかし、決して難しいことばかりが求められているわけではありません。家具の固定、感震ブレーカー、最低限の備蓄、社員を守るための体制づくりなど、今日から取り組めることばかりです。
BCPは「大企業だけのもの」ではなく、「地域・職場・家族を守るための最低限の備え」です。今日学んだことを“明日から”ではなく“今日の帰り道から”始めることが、何よりの一歩になります。
皆さまの事業・従業員・家族の安全のために、これからも防災とBCPの取り組みを進めていきましょう。

【議事の部~懇親会へ】

勉強会の後は理事会・委員会報告を行い、恒例の西村支部長作成の資料を基に情報を共有しました。

山中尚日本代協副会長から、熱いお言葉をいただきました!

支部会の後は恒例の懇親会。会場に向かう道中の冷たい夜風もなんのその。イケオジたちの宴とともに藤井寺の夜は更けていったのでした。

恒例の一枚、いただきました(^_-)-☆<パシャリ

次回支部会は、12月19日(金)15:30から。会場はふれあい会議室 心斎橋Dです。
今年最後の支部会です。皆で集って、また有意義な時間を過ごしましょう!

(記事:南支部 田中記者)

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